2017年2月16日木曜日

マキナ新料金と改革キューバの前途【その3】


私が「マキナ新料金」の記事を読み漁っていたちょうどそのとき、ハバナに住む友人からのメールがきた。彼女は「最近、キューバで変わったこと」をときどき書き送ってくれる。
メールでは、たまたま最近のマキナ事情にふれて、こんなことが書いてあった。

政府が乗り合いタクシーの値段を一つの地区(municipio)内は5ペソと制定、昨日より実施。今後一般市民のふりしたインスぺクトールがマキナに乗り5ペソ以上の請求した運転手は即ライセンス取り上げの徹底ぶり。
え?今まで普通に10ペソはらってたのに?すごい安くなったじゃん、しかも不当に多く請求される心配もない、助かる~!!
とはぬか喜びで、最近ただでさえ朝夕の通勤時はマキナ争奪戦で捕まえるのに苦労してたのに、「5ペソ程度のもうけじゃやってらんねぇ!」って運転手は思ってるらしく、今日あたり土曜なのに街にはマキナが全然走ってない…
これからますますマキナが捕まえにくくなる悪い予感しかしない…"(-""-)"


このメールによると、料金を半額にし、ぼったくりを徹底的に取り締まるという措置に対し自営業の運転手が自然発生的に、いわばストライキを起こしたようだ。
CUBADEBATEの記事の冒頭に、今回の措置は「住民の幸せのため(Para felicidad de la población)」と書いてあるが、残念ながら住民のためになっていないらしい。

かつてのように社会主義的計画経済で、みんながみんな公務員であれば「みんなのために」と政府が決めたことは絶対で、それに従って粛々と物事が動くだろうが、自営業者の場合は、気分とかやる気に左右される。「それじゃーやってらんねぇ!」という事態になれば、その部門はストップする。

キューバは今、「改革期」に入っている。
2011年4月に開かれた第6回キューバ共産党大会で自営業の拡大を謳い、以来、個人営業の店やサービスがどんどん増えている。最初は家族経営からの出発だが、成功するにつれ規模を拡大し、人を雇って本格的な経営に乗り出す人も少なくない。
友好訪問団で表敬訪問する政府に近い機関で「自営業の拡大で貧富の差が拡大するのではないか」と質問すると「そこは政府がきちんとコントロールする」という返答がほぼ必ず返ってくるが、今回の「マキナ問題」一つとってもコントロールするのはかなり難しそうだ。

マキナ新料金の動向を追っていて、一つ思ったことがある。
改革は当然、現状に問題があって始まったことだ。しかし、それでも「みんなの幸せのため」が通りやすい社会ではあった、ということだ。
自営業が増えたことにより、「キューバでもこんなことができるんだ!」と、ときどき驚くような良質なサービスが得られるようになった。このことは否定しようもないし歓迎すべきことではある。
しかし、「みんなの幸せのために」という素朴な価値観がキューバ社会から失われるのは、あまりに惜しい気がする。

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