2017年2月14日火曜日

マキナ新料金と改革キューバの前途【その1】

キューバのニュースサイト「CUBADEBATE」でこんなニュースを見つけた。
Gobierno de La Habana pone precios máximos a rutas de los “boteros”
=「ハバナ市当局、ルートタクシーの料金の上限を決める」

興奮してつい「赤文字&ボールド」で強調してしまったが、個人でハバナを訪れた人、特に長期滞在した人なら、これがどんなに凄いニュースかお分かり頂けると思う。
というのは、ハバナ滞在にルートタクシーは欠くべからざるもの。それでいて、謎の多い乗り物だからである。
市民の足として欠かせない「マキナ」

ルートタクシーは一般に「Maquina(機械)」とか「bote(ボート)」とか呼ばれている、決まったルートを走る乗合いタクシーで、ハバナの主な移動手段である。
バスもあることはある。10年ほど前だったか、「特別期」と呼ばれた未曾有の経済危機から立ち直りつつあった時期、公共交通を劇的に改善するため中国からバスを500台輸入したと聞いた。それから数年間はコース別に色分けされたぴかぴかのバスが市内を縦横無尽に走っていて40センタボス(≒2円)でどこにでも行けたものだが、年々台数が減少し、近年では待つだけ無駄という「使えねーシロモノ」となっている。
一説には、中国へのバスの代金が未払いで部品の供給が止められ、故障しても修理できずにいるとか。私にその話をしたキューバ人は「だからオレ、中国嫌いなんだよなー」と言うのだが、そんな逆恨みされた中国が気の毒でならない。

話を戻すと、そんなわけでバスが当てにならない以上、市内の移動にマキナは欠かせない。しかし「強い味方である」とは言いにくい。それは、決して「快適な乗り物」とは言えないからだ。

マキナの運賃は距離によって10ペソか20ペソだが、この分かれ目が微妙なのだ。同じ場所で乗って同じ場所で降りても請求が10ペソのときと20ペソのときがある。私が一目瞭然の「外国人」だからだろう。いつも10ペソ払っている区間でも「だめだめ、20ペソだ」と言われたりする。100円足らずの細かい話だが、しかし、ここであっさり20ペソ払ってはいけない。
前に、マリアナオ辺りからベダドに帰るのにマキナを待っていたら、通りがかりのおじさんに「運転手はベダドまで20ペソだと言うかもしれないが、絶対払うんじゃないよ。ここからベダドまでは10ペソって決まってるんだから」ときつく言われたことがある。誰かが20ペソ払ったらその運転手は他の人にも20ペソ請求するようになるし、他の運転手も20ペソだと言いだすだろう。それで迷惑するのはこの辺りの住民だ。おそらくおじさんはそれを警戒したのだろう。
そういうわけで、ぼったくりを警戒し、もしものときは戦う覚悟で乗る習慣が身に着いた。私のような気の弱い人間にはこれは結構なストレスになる。

さらに、近頃は新種の「ぼったくり」もでてきた。
昨年12月のある日、シウダ・リベルターからベダドに帰ろうと、手を挙げてマキナを止めた。そこからは23通りを東に向かうルートしかないので、どのマキナでもコッペリアは通るはずだ。それで「コッペリア」と告げ、運転手の返事を待たず乗り込もうとした。すると運転手が「ノー。コッペリアには行かないよ」と言った。意外に思い「え?なんで?」と聞くと「23y10までだ。その先は行かない」と言う。
そうかぁ、23通りの途中で今日は仕事じまいか。それならしょうがない。だけど次のマキナを待つのも面倒だな…、と思い「じゃ、そこまででいいわ」と言って乗ることにした。
23通りと10通りの十字路近くまで来ると、そこでマキナを待っている人がいた。
「ビエハ」と言ったその人に、運転手が意外なことを言った。
「ノー。ビエハには行かないよ。コッペリアまでだ。その先は行かない」
これで読めた。この運転手はルートを区切って、区間ごとに10ペソ請求するつもりなのだ。つまり、仮にシウダ・リベルターからビエハまで行くなら普通20ペソだが、シウダ・リベルター/23y10/コッペリア/ビエハと3区間に区切れば30ペソ稼げるというわけだ。
このような新種の『ぼったくりマキナ』に当たったのはこのときだけだが、他にもこういうやり方で高い料金をとっていた運転手がいたのだろう。この問題がハバナ市市議会で取り上げられ、「CUBADEBATE」の記事にある新料金の制定にまで発展したわけだから。

マキナの説明がつい長くなってしまったので
【その2】に続く


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